利回りの種類と概念

■割引率
割引率とはある将来時点の収益を現在価値に割り引く率のことです。還元利回りと同様、不動産投資のリスクを反映した投資収益率を意味します。
 不動産の価格査定におけるDCF法適用時において、不動産保有期間中の毎期の純収益および復帰価格を現在価値に割り戻す祭に使用されます。現在価値を求めるために純収益や復帰価格に乗じる率自体は複利現価率を用います。複利現価の査定式は以下のとおりで、yが割り引き率に該当します。
  複利現価率査定式
  1/(1+y)^k        y:割引率
                 k:年数

■IRR
内部収益率、または投資収益率ともいいます。「投資価値」と「将来期待できる収益の現在価値」とが等しくなる時の割引率をいい、上記割引率と同じ利回りに該当します。
 IRRは発生時期や発生間隔が一定しないキャッシュフロー同士の利回りを比較する場合に、同じ尺度で比較できる点が優れた点といえます。
 要は投資に際して、その可否を判定する尺度としてNPV(正味現在価値投資によって得られるキャッシュフローを一定の資本コストで現在価値に割り引いたものを合計し、そこから投資金額を控除したもの)があり、NPV>0なら投資実行、NPV<0なら投資不可とされ、NPV=0となる割引率のことをIRRといいます。NPVの式を表すと以下のようになります。

 NPV=投資額+PV(※投資額はマイナスで表される)
  または
 NPV=現在の市場価値−PV(※PVはキャッシュフローの現在価値)

■還元利回り
還元利回りは、キャップレート(cap rate+)とも略され、正式にはCapitalization Rateといいます。つまり資本還元利回りとでもいうべきところ、略されて使われているようです。では何を資本に還元する際の利回りかというと、一期間の純収益です。元本から得られる果実の割合、つまり不動産から得られる一期間の純収益の不動産の価格に対する割合(収益率)という方がわかりやすいでしょうか。
 さて、還元利回りは評価手法や用いる評価の期間により、次の3つに区別されます。
・初年度還元利回り (going-in capitalization rate)
・最終還元利回り (terminal capitalization rate)
・直接還元法での還元利回り(overall capitalization rate)

「初年度還元利回り」は初年度の純収入から価格(収益価格)を求める際の還元利回りです。直接還元法での利回りとほぼ同じですが、DCF法適用の際に、初年度の純収益から不動産の価格を直接求める場合に適用されます。
  初年度還元利回り=初年度の純収入/収益価格

「最終還元利回り」はDCF法において、投資期間が終了し転売時の予想純収益から不動産の価格を直接求める際に使用される場合に適用されます。

「直接還元法での還元利回り」は、直接還元法において、将来の変動予測を加味した標準的な一期間の純収益から不動産の価格を直接求める場合に適用されます。この場合の一期間の純収益は、初年度純収益を市場分析した上で適正に補正するケースや、DCF法での各期の純収益のうち、最も安定もしくは最も低い期間の純収益を使うケースがあり、DCF法による収益価格を検証する手段として適用されます。
 そのたの還元利回りとしては以下のようなものが挙げられます。

■総合還元利回り
 マーケットやその不動産の特性により、土地と建物にかかわる利回りが別々に捉えられる場合に、それぞれの利回りを土地・建物の構成割合により加重平均して、土地建物一体の還元利回りを求めることができます。この還元利回りのことを、総合還元利回りと呼ぶことが多いようです。

自己資本利回り
 この概念は、不動産への投下資本を自己資本と借り入れ金の2つでまかなう時に必要となるものです。借入金の利子率に対して、自己資本がどの程度投資利回りを要求するかを示します。自己資金に外部の低利な資金を加えることによって、自己資金の投資利回りを引き上げ、レバレッジ効果が得られる場合があり、このばあいの効果のシュミレーションをする上で不可欠の指標と言えます。
 なお、借入金利子率については元利均等償還率(通常月利計算を年利に換算したもの)が通常これに相当します。

■取引利回り
 実際賃料収入の売買価格に対する割合をいいます。つまり、経費を考慮しないため、純収益ではなく総収入が分子になります。よって還元利回りが「ネット(利回り」と表現されるのに対して、「グロス(利回り)」「粗利」「表面利回り」と表現されるケースが多いようです。
 一般に既存の賃貸ビルなどの取引において、取引や投資の判断指標として採用されています。特に出口戦略上、市場の取引利回り調査は不可欠となっています。
 なお、当該調査にあたっては、不動産の規模・種類から需要者の属性を判断し、出口の需要者(買主)が業者なのかエンドユーザーなのかと言った調査並びに実際の総収入からの取引利回りまたは満室時想定の総収入からの取引利回りのいずれかが取引の指標とされているのかといった分析が重要です。
      

                            (引用した書籍名: 後日記入)